とってもナウでフラットな時代で
9月16日に新宿歌舞伎町のデカメロンでファッションブランド「BALMUNG」のインスタレーションショーが行われた。縄文土器と弥生土器だったら、縄文土器っぽいフォルムをしたBALMUNGは新宿によく似合う。建築士のロバート・ヴェンチューリは、都市は猥雑になるほど広告や看板が増えると著書『ラスベガス』で書いていた。新宿・歌舞伎町もまさにこれであるし、ヴェンチューリのこの考えは、映画『ブレードランナー』のサイバーパンクとアジアンゴシックが掛け合わさった街のデザインが語られる際にもよく使われる。少々意図が過ぎるかもしれないが、この補助線を引くとBALMUNGが「未来の服」のように見えてきたり、特定のジャンルではない雑多なものの組み合わせによって形作られていることが想像できたりする。
インスタレーションを観るために店舗の階段を登ると、モデルたちの背後には布がかけられていて、そこにはポスト・インターネット的なグラフィックがあった。現実と仮想を問わず、世界から得た着想が、物へと変換され、それを人が着る。しかし、着た人間がいる世界は極めて仮想的。そしてモデルは仮想の世界から、店舗の外に出て来て現実へ。いや、歌舞伎町も仮想と虚構に溢れている。もはや現実などどこにもないように思える環境で、自分を入れておける服だけが、存在への頼りだ。
BALMUNGのデザイナーであるHachiさんは、仕事をきっかけに知り合ってから随分と長い付き合いの友人だ。当日は本人も現場にいたので、僕はこのインスタレーションを観て感じた前述のようなことや、最近興味のあるストーリー消費、フラットネスとナウネスの話を投下する。エンカウント直後、予告なしゼロ距離射撃。